スタンド・バイ・ミー Stand By Me

映画主題歌・テーマ曲・サントラ

1950年代から1960年代にかけて、アメリカでは黒人コーラス・グループ「ザ・ドリフターズ The Drifters」が活躍していた。

R&B、ドゥーワップなどのジャンルを得意とし、リードボーカルとしてベン・E・キング(Benjamin Earl King)が加入すると、「There Goes My Baby」、「ラストダンスは私に Save the Last Dance for Me」などのヒット曲を連発し全盛期を迎えた。

ベン・E・キングは1960年にドリフターズを脱退。翌年にソロとしてリリースし大ヒットとなった曲が、本稿で取り上げる『スタンド・バイ・ミー Stand By Me』である。ちなみに同曲は、1986年に公開された同名の映画における主題歌・テーマ曲としても有名。

黒人霊歌が原曲?

『スタンド・バイ・ミー Stand By Me』の歌詞は、アメリカの牧師が1900年代初頭に作曲した同名の黒人霊歌『Stand By Me』が原曲・元ネタとなっているという。

元は黒人霊歌(聖歌)だが、ポップスとして生まれ変わったベン・E・キング『スタンド・バイ・ミー』では、宗教的な要素は極力排除され、大切な人・愛する人への思いを前面に押し出した歌詞となっている。

ただ、まったく宗教的な要素がないかというと、若干一部の歌詞に聖歌としての名残が見受けられる。詳しい歌詞の比較は黒人霊歌のページで解説しているので、このページでは、原曲には見られない宗教的な表現について、聖書の表現と比較しながら簡単に解説することとしたい。

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聖書との比較その1 旧約聖書 詩篇46

神への賛美の詩を収めた旧約聖書の詩篇(しへん Psalm)、その第46篇には、ベン・E・キング『スタンド・バイ・ミー Stand By Me』の一部の歌詞と内容的に共通性が見られる。まずは聖書の該当箇所から原文を抜粋し日本語訳(意訳)を併記してみたい。

Psalm 46:1

God is our refuge and strength, a very present help in trouble.

神は我らの避け所 我らの砦
苦難の時のいと近き助け

Psalm 46:2

Therefore will not we fear, though the earth be removed, and though the mountains be carried into the midst of the sea;

このゆえに
たとい大地が姿を変え
山が海の中へ移ろうとも
われらは恐れない

Psalm 46:3

Though the waters thereof roar and be troubled, though the mountains shake with the swelling thereof. Selah.

たとい海が鳴りとどろき 沸き返るとも
その高ぶる海に山が震え動くとも
われらは恐れない

Ben E. King 『Stand By Me』 2番の歌詞 冒頭

If the sky that we look upon
Should tumble and fall
Or the mountain
Should crumble to the sea

見上げた空が崩れ落ちてきても
山が崩れて海になっても

細かい表現こそ違えど、両者の内容は、現実には恐らく起こりえない天変地異について言及するものであり、『Stand By Me』のこの部分は詩篇46を踏まえて創作された歌詞である可能性が高いと思われる。

ちなみにこの詩篇46の冒頭部分は、パラフレーズ(Paraphrase)されて讃美歌『神はわがやぐら A Mighty Fortress Is Our God』として16世紀頃から歌われている。作詞作曲は、宗教改革の創始者として有名なマルティン・ルター(Martin Luther/1483-1546)と考えられ、ルーテル派とプロテスタントに最も歌われる愛唱歌の一つとなっている。

聖書との比較その2 イザヤ書41章

旧約聖書「イザヤ書 Book of Isaiah」は、「エレミヤ書」、「エゼキエル書」に並ぶ三大預言書の一つ。66章から成るイザヤ書の41章10節を見ると、こんな記述が見られる。

Don't be afraid, for I am with you.
Don't be discouraged, for I am your God.

恐れるな。わたしはあなたとともにいる。
たじろぐな。わたしがあなたの神だから

この「恐れるな Don't be afraid」という表現は聖書で度々目にするフレーズ。Ben E. King 『Stand By Me』の歌詞では、このような旧約聖書の文言に対して、

No, I won't be afraid
Oh, I won't be afraid
Just as long as you stand
Stand by me

怖くない、怖くないさ
君がそばにいれば

とのアンサーソング的な歌詞をつけ、あたかも聖書の表現に暗に呼応するかのようなフレーズを織り込んでいる。ただ、ここでいう「you」とは「大事な人、愛する人」の意味で、言うまでもなく聖書とはだいぶ離れた内容の歌詞となっている。

ちなみに、日本では運動会やイベントなどのフォークダンス曲として定番の『マイム・マイム』は、その歌詞がイザヤ書の第12章第3節からとられていることでも知られている。

その他 関連する曲

ゴスペルにスタンド・バイ・ミー?

「スタンドバイミー」という曲名は、教会で歌われるゴスペルソングとしても耳にすることがある。ただこのゴスペルソングは、ベン・E・キングの楽曲がゴスペル風にアレンジされたものではなく、新たに作曲されたまったく別の曲。

そのタイトルは、『Oh Lord, Stand By Me オー・ロード、スタンド・バイ・ミー』。グラミー賞を受賞したゴスペル音楽家、リチャード・スモールウッド(Richard Smallwood/1948-)作曲による躍動感あふれるゴスペルソングだ。

なお、チャールズ牧師の黒人霊歌『Stand By Me』もゴスペル音楽として歌われるケースもあるようで、もしかしたらベン・E・キング版も教会等でゴスペルソングとして耳にする機会があるのかもしれない。

有名な黒人霊歌を聴いてみよう

ジャズやブルース、ゴスペルソングなど現代の様々な音楽に影響を与えたスピリチュアルソング、黒人霊歌。それほどメジャーなジャンルではないが、アフリカ系アメリカ人の音楽的感性と西洋のキリスト教が見事に融合した名曲が数多く残されている。

特集ページ「黒人霊歌 有名な曲 歌詞・日本語訳・動画の視聴」では、日本でも有名な黒人霊歌の名曲解説をまとめているので、こちらも是非一度目を通していただきたい。時代を超えて現代の我々の心に響く何かがきっと見つかるはずだ。

【試聴】スタンド・バイ・ミー Stand By Me